世界経済フォーラムの世界IT報告によると、IT活用度において日本は20位、アジアでは5位という発表がありました。
これは世界的にIT面で進んでいるとは決して言えない状況です。
ITの戦略的活用で国内企業同士での凌ぎを削った内争から国際的優位性を確立することが今の日本の最大の課題と言えるでしょう。
そこで人工知能分野における日本の優位性を確立するためにはどうすればいいのでしょうか。
日本の人工知能に対する考え方
日本は人工知能についてどのように考えているのでしょうか。
IT専門家やIT企業などの調査分析を行っているガートナージャパンは今年2月、日本の人工知能に関する調査を行いました。
その中で、
「人工知能に関するスキルについて獲得したいか?」
という問いに対して、以下の結果となりました。
・スキルを獲得したい…41.3%
・当面、様子見を継続…32.0%
・不要…7.8%
・分からない…10.9%
・関心がない…8.0%
注目を浴びている人工知能ですが、日本人の4割がこれほどまでに人工知能に関心を持っているのかと驚くほどの意外な結果となりました。
また、
「人工知能が仕事に与える影響についてどう思うか?」
という問いに対して。
・10年以内に人工知能は自分たちの仕事を奪う…10.5%
・10年以内に人工知能は自分たちをサポートする…44.1%
・10年以内に人工知能の影響はない…24.9%
・分からない…14.6%
・関心がない…6.0%
ガートナー ジャパンのリサーチ部門アナリストは、「日本の人工知能に対する関心は高く、多くの人が人工知能による将来への影響を自分たちの問題として捉え始めていることが、今回の調査結果からも明らかになりました」と述べました。
日本、いや、世界中でさらに人工知能が進展していけば、関心を持つ人や企業は今後どんどん増えていくでしょう。
Googleと今後の日本産業の不安要素
もちろん海外でも人工知能に関心を持っている企業は多いです。
Googleのスンダー・ピチャイCEOは「世界の情報を整理し、誰もが活用できる価値あるものにする」と、人工知能について語った。
Googleはご存じのとおり、検索エンジン、クラウドコンピューティング、ソフトウェア等のIT関連のサービスを提供している世界トップクラスの大企業。そんなGoogleが注力している事業が「自動車分野」と「ロボット産業分野」です。その中の一つのプロジェクトとして、ブレーキやハンドルに人工知能を組み込ませ、世界初の無人運転を成功させようとしている。
ここで必要となるのが優秀な人工知能開発者。
Googleは近年、カナダや英国の人工知能企業を買収しているが、日本でも東京大学の優秀な学生たちが続々と引き抜かれているようです。
東京大学で人工知能の研究をしている松尾豊准教授は、「優秀な学生たちが次々に引き抜かれていく。日本産業を考えると国内にとどまってほしいが、かと言って彼らを止めることはできない。」と複雑な心境を述べました。
日本で育った優秀な学生たちが海外の大企業へ行ってしまう。これは今後の日本産業を発展させていくことに対して負のスパイラルです。
人工知能分野の“国際的優位への確立”に向けて
人工知能分野で“国際的優位への確立”を目指す日本にとって、世界の企業と競い合うためにはどうすれば良いのでしょう。
それは産業用ロボット分野の更なる発展がカギを握るでしょう。
日本は世界的に産業用ロボット分野で圧倒的なシェアを誇ってきました。
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が発表したロボット白書2014によると、日本の2014年のロボット市場の市場規模1兆6000億円程度に対し、2035年には市場規模10兆円まで拡大するであろうと予想されています。
日本の産業用ロボットシェアが圧倒的なのは、開発能力が優れており、それを必要とする個人や企業が多いためだと考えられます。
日本は工業大国です。そのため製品を大量生産していく過程で産業用ロボットの導入はマストなのです。
この産業用ロボット分野で培った技術力を人工知能分野に適用していくことで世界をリードすることは可能なのではないでしょうか。