2016年3月15日。

 

世界中を驚かせる出来事が起こりました。

米Googleの研究部門であるGoogle DeepMindが開発した囲碁AI「AlphaGo(アルファ碁)」が韓国のプロ棋士イ・セドル氏との5番勝負に4勝1敗で圧勝したというニュースです。

 

セドル氏はもちろんの事、対局を解説していた解説者の驚愕した表情がとても印象的でした。

 

 

囲碁で人工知能が人間のチャンピオンを圧倒したことは今後の人工知能の急速な進化を予感させるようにあっという間に世界中に広がりました。

 

 

日本政府も人工知能(AI)やビッグデータなどの先端技術の市場の規模を2020年に30兆円に育てると産業競争力会議で発表しました。

電力自由化で市場の顧客獲得競争が始まっている電力市場が20兆円ということを考えれば、ビジネスとして見逃すことはできない規模になることは間違いありません。

 

人工知能を考える上で今回の囲碁の対局は4勝1敗の勝敗も含め非常に興味深いニュースです。

 

■目次

  1. 囲碁AI「AlphaGo(アルファ碁)」とは何なのか?
  2. 囲碁での勝利の大きさ
  3. 人工知能が負けた1敗

 

 

 

1.囲碁AI「AlphaGo(アルファ碁)」とは何なのか?

現在研究が進んでいる人工知能の分野には「汎用人工知能」と「特化型人工知能」の2種類の人工知能が存在します。

人工知能=AI(artificial intelligence)と聞くとアトムの様に人間と同じ知能を持ったロボットを想像する人が多いと思います。

 

 

もちろんそれも正解です。

 

 

汎用人工知能と呼ばれ、人間と同じような知能を持った人工知能の開発を目標とした分野です。

では2020年までにアトムのような人間と同じ知能を持ったロボットを世界中に普及させようと政治家たちは考えているのでしょうか。

 

それは違います。

 

最近、Googleや日産など自動車の自動運転システムが話題になっていますよね?

これらもまた人工知能を利用したシステムなのです。ここでの人工知能は特定の能力において人間以上のスペックを持った知能のことを指します。

特化型人工知能と呼ばれ、囲碁でその強さを見せつけたAlphaGo(アルファ碁)もこの分野に属します。

 

AlphaGo(アルファ碁)の勝利は今後、特化型人工知能の発展にどのように影響して行くのでしょうか。

 

 

 

2.囲碁での勝利の大きさ

囲碁の経験がない方にとって、AlphaGo(アルファ碁)の勝利がどのくらいすごいことなのか、いまいちピンと来ていないと思います。

 

分かりやすくオセロと比較して見ましょう。

白と黒を交互に4つ並べた状態からスタートするオセロですが、最初の打ち手は4通りしかありません。

そこから交互に両者打ち合うことで、諸説ありますがオセロの打ち手は全部で10の60乗にもなるそうです。

1兆が10の12乗であることを考えるとその数がいかに大きいかがわかると思います。

ちなみに10の60乗には那由多(なゆた)という単位があり、ついで

10の64乗=不可思議(ふかしぎ)と続き、

10の68乗=無量大数(むりょうたいすう)以上には単位が存在しません。

 

 

では本題に戻ります。

囲碁の打ち手は着手禁止場所やコウ(お互いが交互に相手の石を取り、無限に続きうる形)など、ルールにより打ち手の制限等を加味してもおよそ10の300乗を超えると言われています。

 

まだ、ピンときていない人のためにゼロの数を実際に並べて見ます。

 

■10の60乗

1000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000

 

■10の300乗

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000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000

000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000

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000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000

 

どうですか?囲碁の打ち手がいかに多いのかをわかって頂けたと思います。

 

この膨大な打ち手の数もあり、あと10年は人工知能がプロ棋士に勝つことは難しいと言われていました。

その為、AlphaGo(アルファ碁)の勝利は人工知能分野の急速な発展を魅せつけられる結果となったのです。

 

 

 

3.人工知能が負けた1敗

囲碁や将棋などのゲームにおいて、王者を決める試合は複数回行われる事が多いです。

将棋の竜王戦は7番勝負、囲碁のLG杯世界棋王戦は3番勝負(イ・セドル氏は同大会の2008年チャンピオン)、

チェスの世界チャンピオン大会では12番勝負で、勝ち1、引き分け1/2、負け0ポイントの扱いとして、先に6.5ポイント取った方が勝ちというかなりの長丁場です。

 

これは単に先行・後攻の有利・不利や試合ごとの戦術変更を目的としたものではなく、プレイヤーの体力・精神面などを考慮したルールでもあります。実際に対局ごとのプレイヤーの打ち方や精神状態の変化を見ることができるのも、複数勝負の魅力だと思います。

 

 

では、そもそも人工知能を相手とするときに、複数勝負を行う必要はあるのでしょうか?

 

 

人工知能には体力や集中力などによる影響はありません。

仮に、人工知能が全ての打ち手を計算上把握できているのであれば、人間が何度勝負を挑んでも勝つことはできません。

 

AlphaGoがイ・セドル氏に対して3戦続けて完勝した時、これ以上の対局は必要ないのでは?と個人的に思いました。

 

しかし、この考えは完全に間違っていましたね。

 

第4戦、イ・セドル氏が投じた78手目と82手目によって完全に形成が逆転し、イ・セドル氏はAlphaGoから初めて勝利を収めました。

後に「素晴しい手筋」と描写されるイ・セドル氏の78手目と82手目のあとAlphaGoは非常に奇怪な手を打ち続けたと言います。

 

 

今回の対局から

  • 人工知能(AlphaGo)は全ての打ち手を把握しているのではなく、常に考えて打っている。
  • 人間の判断力には人工知能(AlphaGo)にまさる部分がある。

という2点に本章では注目していきたいと思います。

 

 

まず1番ですが、「人工知能」なんだから考えて打つなんて当然のことだと思うかもしれません。

 

AlphaGoが勝利した第一局目、試合の解説者をはじめとした多くがイ・セドル氏の一方的な試合になることを予感していました。

序盤からイ・セドル氏が主導権を握り、AlphaGoは人間の囲碁棋士が打たない様な手を打ち続けたからです。

 

 

しかし、結果は御存知の通りAlphaGoの圧勝に終わりました。

 

 

ここで注目して欲しいのは

 

AlphaGoが人間の囲碁棋士が打たない様な手を打って勝利していることです。

 

AlphaGoは過去15万局の盤面から碁石の並び方を徹底的に比較しています。

そこから勝ちにつながる展開の石の並びを自ら見つけ、その局面に繋がる様な最善の手を考え出します。

このような人工知能が自ら考え、進化していく過程にはディープラーニングという機械学習が使われています。

 

また、AlphaGoは今回の対局に向けて、同じAlphaGo同士で3000万回の対局を行わせたそうです。

第1局で見せたAlphaGoの奇妙な手は人間の棋士が未だ到達していない別次元の1手だったのかもしれません。

 

そんな神の域に達しているとも言えるAlphaGoから勝ち取った1勝に今後の人工知能の課題があると考えます。

 

 

先述した3000万回の対局を仮に人間が1日10局ずつ対局したとすると、8200年かかります。

とても一人の棋士が1生のうちに経験できる数ではありません。

 

イ・セドル氏が第4戦78手目に投じた1手、たとえそれが苦し紛れに出たまぐれの1手だったとしても8200年打ち続けた相手を打ち負かす事ができる手でした。

そんなとっさの判断力こそが人間の最大の特徴であり、人工知能が今後直面する課題なのではないでしょうか。

 

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